年功賃金の背後にこうした暗黙の契約の論理が作用しているとすれば、ここでもうひとつの面白い解釈をつけ加えることもできる。それは目本の企業は戦後の急速な経済成長の過程で労働者から資金の提供を受けていたという事である。なぜなら労働者が若く働き盛りの間、長期にわたって労働者の限界生産力よりも低い賃金を支払いつづけていたとすれば、それは金融機関だけでなく労働者からも資金供給を受けていたのと同じ事になるからである。
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暗黙の契約があったとすれば、やがてそれらの労働者が年配になった時、彼等の限界生産力よりも高い賃金を支払う事によって、その負債を企業は返済しなくてはならない。若い時期に高度経済成長を支えた労働者達が五十代の年配になった今がその時期に当っているのかもしれない。いずれにしても、年功型の賃金制度が日本経済の急速な成長の時代には労働者にとっても企業にとっても大いにメリットがあり、それが日本経済の技術進歩や資本蓄積を支えたきわめて有効な装置として機能した事はたしかであるといえるだろう。